エンジンは何の前触れも無く、突然止まりました。
異音や振動があった訳ではなく、キル・スイッチをオフにしたような感じでした。
幸い早朝なので交通量も少なく、無事に路肩にバイクを止めることが出来ました。
路肩に寄せるとき、ウインカーは点滅しました。また、ギアをニュートラルにするとグリーンのランプは点灯します。オイルプレッシャーの赤いランプも点いていて、一見、電気系の異常は無さそう。
一体どうしたんだろう?と思ったとき、ETCユニットのランプが消灯していることに気が付きました。
もしかして、と閃きました。
カタナの電気回路は大元に20Aのヒューズがあり、そこからヘッドライト、ウインカー、イグニッションに回路が分かれていて、それぞれ10Aのヒューズが入っています。
ETCの電源はイグニッションのラインからとっており、MSA(マルチ・スパーク・アンプ)ユニットの電源や、V-UP16(IGコイルの電圧の昇圧ユニット)に電源供給するリレーの駆動電源もイグニッションのラインからとっています。
要は、ETCの電源の他に、エンジンのプラグに火花を飛ばすためのユニット類の電源をイグニッションのラインからとっているのです。
という事は、もしかしてイグニッションのヒューズが切れているんじゃないか?
そう思ってヒューズボックスを開けてみると、予想したとおりヒューズが切れていて、そのヒューズをスペアのものに替えてやると、エンジンは始動しました。
ホッとして走り出しましたが、心の中にはムクムクと黒い疑問の雲が湧き出てきました。
なぜ、ヒューズが切れたのか?普通、ヒューズが切れるなんて事は無いはず。これは何かあるのではないか?
そんなことを考えながら走っていたら、関越自動車道への入り口を通り過ぎてしまいしました。
あぁ~何やってんだ!ただでさえ時間押しているのに、と思ったとき、またエンジンが止まりました。
再びヒューズを確認してみると、やはり切れています。
今迄のテストで数百キロ走ったけどヒューズが切れたりはしなかったのに何故?10Aでは容量が足りないのか?MSAはそんなに電気を食うものなのか?
そんなことを考えながら、スペアのヒューズに交換しました。残っていたのは20Aのヒューズのみ。
幾らなんでもこれは切れないだろう、一体何が起きているんだろう?いろいろと考えを巡らしながらも、ともかく先を急ごう、と関越自動車道に入りました。
しかし、どうもエンジンの調子がおかしい。吹け上がりがスムーズでないし、ハンドルに伝わってくる振動も増えています。
堪らず、ちょうど目に入ったSA(サービス・エリア)に入り、バイクの駐車場にカタナを止めました。
何らかのトラブルが起きているのは明らか。これでは北海道はおろか新潟までもたどり着けないかもしれない。それどころか家に戻ることすら難しいかもしれない。
バイクから降り、ヘルメットをとりながら思わず大きくため息をついてしまいました。
これはツーリングは中止にすべきだろう。いや中止にせざるを得ない。そういう考えが浮上してきました。
今から往路のフェリーのキャンセル料金は全額返っては来ないだろう。*1 でもそのくらい良いではないか。どうせ気分が乗っていなかったし、無理して行ったところで北海道にはSやKが引き寄せた雨雲が待っているだけ。家で高校野球でも見ている方が得策だ。
SやKやNにもツーリングのリタイアを伝えなければならない。みんな驚くだろうし、がっかりするだろう。
それにしてもなぜツーリングの出発直後にこんな事が起きるのだ。
いろいろなことが頭を駆け巡りましたが、ここはまず落ち着かねばならない、と缶コーヒーを飲んで一息つくことにしました。
すると、結構落ち着きを取りものでせるものですね。飲み物の力って偉大です。
改めて考えたところ、
- 状況から考えて問題の根源として一ヶ月前に取り付けたMSAが一番怪しい。
- MSAを切り離して以前の状態にすればトラブルは多分解消するはず。
- 幸いな事に万が一を考えて出先でも接続を戻せるような接続構成にしている。
- もう新潟港発のフェリーには間に合わないかもしれないけど、家に引き返すにしても接続替えはやった方が良い。
ということでMSAを切り離す作業を行う事に決めました。
山のような荷物を下し、ガソリンタンクを外して、配線の接続替えを行います。
▲これがその時の様子です。夏休みの早朝のSAには相応しくない光景です。
やってみると、案外時間を要さずに接続替えが出来ました。試しにエンジンを掛けてみるとちゃんとエンジンは回ります。これなら走れそう、と大急ぎでタンクを載せ、荷物を積み込みます。
しかし、エンジンを掛けるとまた調子がおかしい。やけにエンジン回転がバラついて、アクセルを戻すとアイドリングせずに止まってしまいます。どうも2気筒ほど火が入っていない感じです。
再び荷物を下ろして配線をチェックします。すると、片側のIGコイルに接続するコードの端子がキチッとはまっていないのが見つかりました。
改めて端子の勘合をチェックしてからエンジンを掛けてアクセルを2,3回ふかしてみると今度は大丈夫そう。
すると、急に肝が据わってきて新潟まで行けるだけ行ってみよう、という気になってきました。途中で止まってしまおうが、フェリーの乗船にまにあわなくても、チャレンジしてみよう、と。
荷物を積み込むと、再び新潟に向けて走りだしました。
<続く>
*1:改めて調べたところ、出港前ならキャンセル料は30%でした