自分だけのカタナをつくる ~ Bike &DIY ~

GSX1100S刀のプライベートカスタムと気ままな工作と冬はスキーの日記です

ツーリングの思い出~港での見送り

 苫小牧発の帰路のフェリーでのこと。たしか大洗行きのフェリーで、まだ明るいうちに出航する便でした。

 無事フェリーに乗船すると私は楽な格好に着替えてデッキに出て、出航前の最後の北海道の景色(とは言っても見えるのは味気ない港湾施設ですが)や、錨やロープを巻き上げたりの出航準備の様子を眺めたりしていました。

 デッキには他の乗客も出ていました。埠頭には見送りに来てくれた人もチラホラいて、別れの言葉を交わしている人達もいました。

 このフェリー、今思うと比較的小型だったようで、埠頭とデッキの距離が近くて、声を張り上げ無くても話は出来たのです。

 


 私の隣には小学生位の子供を二人連れた夫婦がいて、埠頭にはそのご両親とみられる人達がいました。おじいちゃん/おばあちゃんの家に夏休みの帰省で遊びに来ていたようです。

 主にしゃべっているのはお母さんとおばあさん、それに孫たち。

 楽しかったね。バイバイ、またね。元気でね。また来るんだよ。といった会話をしています。お父さんは殆どしゃべらず、おじいさんに至っては踵をキチッとつけた直立不動でデッキの方を見ているだけで一言もしゃべりませんでした。


 その家族の更に隣には、30歳半ば位の男性がいて、埠頭にはどう見てもバイク乗りにしか見えない(バイク用ジャケットにジーンズにブーツ)男性がいました。

 デッキの男性が先輩で埠頭の男性が後輩のようで、ちょっと体育会系っぽい感じ。

 いろいろありがとな、まだ帰りたくないなぁ、と言う先輩に対し、後輩の方はドッカリと地面に腰をおろして、船から降りちゃいましょうよ、まだ間に合いますよ、なんて言っています。

 

 やがて出航の時刻となり、出航の合図のドラ(汽笛だったかもしれません)が鳴って、船が動き出しました。


 すると、埠頭の男性はスッと立ち上がり、じゃぁ、と言ってスタスタ歩いて行ってしまいました。ずいぶんドライだな、と思いました。


 一方、埠頭のおばあさんはちょっと寂しそうな表情になって、ピタリとしゃべるの止めてしまいました。反対にそれまで黙って立っていたおじいさんが、直立姿勢のまま、右手に帽子を持って大きくゆっくり振り始めました。


 と、突然、バイクのエンジン音が聴こえました。

 埠頭を大型バイク(ZRX1200かゼファー1100だったかもしれません)がフェリーと並走するように走ってきました。
 ライダーはさっきまでそこにいた男性で、ビッ、ビッーとホーンを鳴らして大きく手を振るとUターンして、後は一度も振り返らないで埠頭から走り去っていきました。(気障な演出だなぁ、と思いましたが、見事に決まっていました)

 


 この後もおじいさんはずっとゆっくり手を振り続けていて、おばあさんも横でじっと立ち続けていました。姿が小さく見えなくなるまで二人はずっとそうしていました。


 この情景、当時も印象深かったのですが、時間が経つにつれてますます自分の中で印象が深くなってきています。