夏が来れば思い出す、ちょっとした思い出があります。
あれはもう10年くらい前のこと。まだ750のカタナに乗っていたときのことです。
7月か8月の休日の曇天の午後。カタナの整備をアパートの駐輪場でやっていました。たしかスプロケットやチェーンの交換をしていたように思います。
一人で黙々と作業をやっていたら、近所で遊んでいる子供達の歓声が聞こえてきました。時代劇で子供が ″わーわー″ 言って駆け回っているあんな感じです。
その ″わ一わー″ が段々近づいてきたな、と思った途端、「あっ、あれ何だ!?」という声が聞こえてダ~ッと小学2~3年生くらいの男の子3人が駆け寄ってきて、私とカタナは取り囲まれてしまいました。
彼らは目をキラキラさせて「わ一、すげえ」と言っています。悪い気はしないなぁと思ったら、
「ねー、なんでバイク壊しているんですか?」
と予想外のことを言ってきました。
何と言えば良いだろう。"整備”と言っても分からないだろうし、"スプロケット交換”ではもっと分からない。考えた末に
「これは修理をしているんだよ」
と答えました。
しかし、既に彼らの興味は工具箱の中身に移っていて興味津々で眺めています。
スパナを指差し、「俺これ知ってる!これでネジ回すんですよね!お父さんも持っているんだ」
そうだよ良く知ってるね、なんて話をしているうちに、三人のキャラクターが分かってきました。
一人は物怖じせずグイグイ前に出てくるタイプ。もう一人は快活で人当たりが良く、もう一人は口数が少なく物静かな感じ。
面白い組み合わせの3人だな、なんて思ったその時、ちょっと遠くで″ゴロゴロ″という雷鳴が聞こえました。すると...
「あっ!おへそ取られる!!」
とまたしても虚を突かれる事を言い出しました。まだそんな事信じてるのか?それともふざけているのか?
しかし彼らは「やばい!どうしよう」とオロオロ大騒ぎ。あっけにとられていたら
「おへそ取られたことありますか?」
とまさかの質問が飛んできました。
大人をからかっているのだろうか?でも本気で信じているっぽいし。
″サンタさんて本当にいるの?″ に匹敵する難問です。何と答えれば良いのだろう。一瞬の間に様々な考えが頭を駆け巡り、考え抜いた結果
私)「おへそを取られたことは無いよ」
子)「どうしてですか!?」
私)「おへそが出ないようにキチンと服を着ていたからね」
子)「そっか一!!」
雷様の否定はせず、かつ嘘は言わない、という我ながら絶妙な落としどころだったと思います。
子供達は納得し、落ち着きを取り戻しました。
そして、「よし行くか!」、「ありがとうございました!」という声を残して走っていきました。
最後に駆け出そうとしたもの静かタイプの子は、ピタリと立ち止り、私のほうを向いてペコリとお辞儀してから走っていきました。
良い子達だなぁと思いました。
あれからもう10年くらい経ったので、彼らも運転免許が取れる歳になっているはず。
オートバイ好きになっていたら嬉しいです。