自分だけのカタナをつくる ~ Bike &DIY ~

GSX1100S刀のプライベートカスタムと気ままな工作と冬はスキーの日記です

フォーミングのインナーブーツを作った件(2/3)

 インナーブーツのフォーミング作業編です。

 まずこのように素足にパッドを貼って行く作業から始めます。

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 足の突起している部分の "逃げ” を確保するためのようです。店主(以下、Aさんと記します。お名前はネットでちょっと調べればわかると思いますが、一応ここではイニシャルで書いておきます。)の触診で得た感覚を元に貼っているようです。

 Aさんからは何も説明はありませんでしたが、ブーツのフォーミングではこのパッド貼りがとても重要らしいです。パッドは手製らしく、丁寧な事に角も落とされていました。このブーツ研究所でのノウハウの蓄積なのでしょう。

 

 パッドを貼ったら店で用意してある靴下を履き、つま先にこれまた手製らしいガードをはめます。フォーミングのときに足が押されて前にずれないための備えで、このガードもノウハウの一つなのでしょう。(ガードが適切でないとつま先が窮屈になってしまったりするそうです。)

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 続いてブーツの準備。

 これまた手製らしい治具でブーツのシェルをガバっと開き、フォーミング剤の注入(踵部分)と余りの排出(つま先側)のチューブが付けられたインナーブーツをシェルの中に納めます。

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by https://rexxam.com/FNCT/in.html

 

 この治具、残念ながら写真は撮らなかったのですが、私的にはとても興味を惹かれ、この道具良いなって思いました。

 バイクのリア・サスペンションのスプリング交換で使用するスプリング・コンプレッサーみたいなもの、とでもいうか。ちょっと文字では表現し難いです。。。

 

 そして靴下の上からビニール袋をかぶせ、足をブーツの中に納めます。

 そしてバチバチとバックルを締めていきますが、この締め具合にもノウハウがありそうです。

 これで準備完了。

 

 隣にある作業台の上に載ります。

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 この作業台の両脇からは下から取っ手が伸びていて、フォーミング中はその取っ手を引っ張ってブーツの底に足を押し付け、フォーミングの圧力で足がブーツの前方にずれないようにして下さいとのこと。

 

 そしていよいよフォーミングの開始。

 では始めますよ、という声の後、「や~~~ッ!」というA氏の気合の掛け声と共に右足からフォーミング剤(発泡ウレタン)の注入が始まりました。

 この掛け声の事も予め知っていましたが、何も知らないとかなり驚くと思います。

 しかしそれよりも驚いたのが足にかかるフォーミングの圧力。想像を遥かに上回る圧力で足が締め付けられます。成る程、これはこのような取っ手の付いた作業台が必要なのも納得です。

 

 フォーミング剤の注入作業時間はずいぶん長かったような気もしますが、多分片足で3分もかからなかったのではないかと思います。とにかくフォーミングの圧力に耐えて踏ん張ることに集中していたので。

 その間もA氏は「エ~~イッ」とか「うぉりゃぁ~~~~」と掛け声を上げていましたが、どのような作業をしていたのかは見えませんでした。

 

 しかしウレタンによるフォーミングがこんなにも強烈だとは。

 そういえばちょっと昔、クルマのボディ剛性を上げるためにサイドシェルの空間に発砲ウレタンを充填するカスタムがあった事を思い出しました。

 このカスタム、割と手軽に出来るということで流行ったようですが、ウレタンの発泡の力が強くてサイドシェルの隙間とから余分なウレタンがはみ出してエラいことになるパターンが多かったそうです。

 

 こんな感じで右足が終わり、左足の方も終了。フォーミング剤が固まるまでしばらく作業台の上で待機です。

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待機中の図。既にチューブは取り外されています。

 こちらは使用済みのフォーミング剤。フォーミング剤の調合も研究所独自のものだそうです。

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 ある程度フォーミング剤が固まったらカント(脛の左右の傾き)の調整。これまたスキー板のビンディングが付いたワンオフ品らしき治具にブーツをはめて乗りブーツと膝の位置関係をチェック。膝が内側に寄っていたので脚をグイっと外側に押し付けてインナーブーツの形を矯正します。左側も同様に矯正しました。

 

 一旦ブーツを脱いで自分のインソールをインナーブーツの中に敷き、足に貼ってあったパッドを剥がしいつも履いている自分のスキー用ソックスを吐いて、再びブーツを履きます。

 バックルを締め、もう一度カント確認用の治具に乗ってカントが問題ない事を確認。これでフォーミング作業は完了です。

 

 出来上がったフォーミングブーツは履き心地があまりに普通なのでやや拍子抜け。きつい所が無ければ緩い訳でもない。窮屈だったり部分的に押されている部分もなし。

 

 フォーミングで足がギュウギュウに締め付けていたので少し緩く感じるかもねとの事でしたが、う~んやはり実際にスキーで滑ってみないとよく分からないかも。

 

 一方、Aさんはバッチリです!良いフォーミングが出来ました、と大変満足そうで嬉しそう。

 

 客よりも店の方が満足しているっていうのもあべこべな気もしますが、納得のできる仕事、作業が出来たことが嬉しいのでしょう。

 

 これでブーツは出来上がったわけですが、Aさんは

「実際に滑ったら気になる部分が出てくると思います。そうしたら対処しますので持ってきて下さい。そうやってより良いブーツになっていきます。ブーツ作りはこれで完成ではなくこれからが始まりです。」

 と仰っていました。

 

 なんだか品物を買ったというより職人の仕事を買ったという気分です。普段の買い物とは違った満足感で帰途につきました。これからのスキーが楽しみです。

 

 次回は出来上がったインナーブーツについて紹介します。