FCRキャブレターを使っていて気になるのはボディーの摩耗です。
以前使っていた35ΦのFCRも長年の使用でボディの摩耗が発生していて、39ΦのFCRも入手時点(中古)で若干の摩耗が発生していました。
摩耗するのはスライドバルブのローラーが通る部分で、汚れでローラーの回りが悪くなるとアクセルの開閉でローラーが引きずられることで発生するようです。
因みにミクニのTMRはローラーがボディ側に付いていて、摩耗するのはスライドバルブの方とのこと。スライドバルブの交換で対処できるので、こちらの方が良い設計だなぁと思います。
ボディの摩耗が生じるとアクセルの開閉にスムーズさが失われたり、最悪はバルブの張り付き(アクセルグリップが動かなくなる)が発生します。
ボディ摩耗はFCRキャブレターの宿命みたいなものですが何とか対策できないものなのかなぁと常々思っていました。
そう思う人は多いようで、純正のローラーより幅の広いワイドローラーなるものが販売されたりしています。摩耗によるボディの溝より幅の広いローラーに替えることで本来のスライドバルブの動きを回復する事が出来ますが、摩耗そのものの根本対策では無く、一時しのぎの延命処置といえます....
また、ボディのローラーが通る部分にステンレスの板を張り付けて対策している人もいるようです(ネットで拝見)。これはなかなか具合良さそうでした。
先日、FCR39のメンテをしたときに何気なく ”FCR 摩耗” でネット検索してみたら幾つかのブログで興味深いパーツを見つけました。
FCRのボディ側面に設置するガイドで、スライドバルブのローラーの樹脂部分を外してベアリングのみの状態で装着するもの。このガイドがいわばレールの役割をするわけです。
これを付ければ摩耗が生じたボディ*1でも本来のバルブの動きを取り戻すことができます。新品なら摩耗の予防にもなります。これはまさに自分が求めていたものじゃないか!
これはプラスチック樹脂の加工を行っている「共立工芸」さんというところが開発したもので「SEPベアリングガイド」というものでした。(上の写真は共立工芸さんのブログの写真です。)
この会社は本来はバイク関連の製品とは無関係の会社のようですが、社長さんはバイク乗り(GSX-R1100)でFCRのユーザー。そして無いものは自分で作る!という精神のお持ちの方。やはりFCRのボディの摩耗を気にしていたときにこのパーツのアイディアを思いつき、最初は自分のために作ったとか。
それをブログで紹介したら欲しいという問い合わせ増えてきて販売を開始したそうです。
このベアリングガイドの素材はPEEK材という樹脂だそうで、ミッションのギヤなんかにも使われたりする非常に強度や耐摩耗性に優れた樹脂とのこと。FCRのボディより遥かに耐摩耗性がありそうです。
アイディアの思いつきから試作品の製作といった過程がブログに書かれております。
「思い立ったら止まりません」と試作を始め、いつの間にか徹夜になって試作品を完成させテスト走行するとか、読んでいてすっかり引き込まれてしまいました。
SEPベアリングガイド初期ロット販売開始 | 日記みたいなもの
SEPベアリングガイドを予備として購入された方&検討中の方へ | 日記みたいなもの
最初はそんなに売れないだろう、と思っていたのが直ぐに完売し、その後追加製作・販売を繰り返し、現時点で29次ロット目だそうです。
販売開始はもう6年くらい前。不覚にも今迄全く気付きませんでした。もっと早く知っていたかった...
SEPベアリングガイドの価格は1気筒分で6,600円。カタナは4気筒なので26,400円となり結構な金額となりますが、少量生産だし決して高い金額では無いと思います。材料も結構高価らしいですし。
耐久性については社長さんが 「十分な耐久性があるのでベアリングガイドの予備品を購入する必要はありません」と言われています。
しかも「もし予備として購入している場合、未使用なら返品/返金も受け付けます」と商売っ気の無い対応をしています。素晴らしい職人気質です....
そんな訳で、ブログをあらかた読んだところで居ても立っても居られなくなり、ベアリングガイドの予約注文をしてしまいました。(この時はまだカタナの不具合の原因探求の最中でした。)
ガイドはいつ頃出来るのだろう?2ヵ月くらい待つかなぁと思っていたのですが、ラッキーな事に次ロットの製作が完了するタイミングだったようで、直ぐにベアリングガイドを受け取る事が出来ました。
久々に期待で心が躍るパーツを入手しました。
*1:ワイドローラーを付けて摩耗が発生したボディでは使えないそうです。