自分だけのカタナをつくる ~ Bike &DIY ~

GSX1100S刀のプライベートカスタムと気ままな工作と冬はスキーの日記です

2018 北海道ツーリング ~ 5日目(苦行の雨)

 ビュービューという風の音で目が覚める。時計を見るとまだ3時台。起きるには早すぎるのでもう一度寝ようと思ったが、風の音がうるさくて眠れない。時折パラパラと雨の音も。

 風は弱くなったり強くなったり。ウトウトしながら一時間くらい経つと近くのテントが撤収を始める物音が聞こえ始めた。

 天候が気になるので、スマホの雨雲レーダーを見ると稚内方面はまだしばらくは雨雲がかからない模様。道央、道東方面は相変わらずの雨雲予報。

 それよりも東北方面が凄く大きな雨雲に覆われる予報になっている。地形が分らないほどの雲。時間を進めるにつれ大雨を示す黄色や赤色の部分が増えてくる。

 仙台も昼前には大雨になる模様。S氏の雨男パワーにしても凄すぎる。

 そういえば、K氏が仙台のT夫妻のところに遊びに行くのは今日だったはず。これは偶然なのだろうか?

 

 これは早めに出発した方が良さそう。

 お湯を沸かしてコーヒーを淹れ、パンを炙って朝食を済ませる。こいう天候のときは大きな前室のあるSTACYは良い。

 朝食を終えると直ぐにキャンプの撤収に取り掛かる。昨夜は荷物をあまり広げていなかったのであまり時間を要せずに荷物がまとまる。

 ライダーだけでなくクルマで来ている人も天気が悪くなる前に撤収しちゃおう、という人が多いようで早朝なのに慌しい雰囲気。

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 駐車場のオートバイへ荷物を運んで行くと、昨夜コインランドリーで会ったハーレーのご主人が「やあ、おはようございます。テント、どこに張ったんですか?」と声を掛けてくる。ここは良いキャンプ場ですね~とちょっとお喋り。

 「教えてもらったトウモロコシ、食べに行きますよ」とツーリングにワクワクしている様子。良い表情してました。

 

 駐車場にはなかなかの強者が目に付きます。

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 荷物をオートバイに積んでいるうちにまた雨がパラパラと降り出す。カッパを着こみ、バッグに付属のカバーをかけ、地図を入れたタンクバックにもカバーをかける。

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出来ることは全部やりました、の図



 

 

 準備が出来たところでそそくさと出発する。居心地の良いキャンプ場なのでもう少しゆっくりしたかったのだが。

 

 

 今日の目的地は網走。できれば知床のウトロに行きたい。天気が悪いのなら走りに徹して一気に行こう。

 稚内の街を後にする前に、昨夜“御用”となった現場を再確認する。

 現場は進行方向の道路に対し三本の道路が極短い間隔で交差していてそれぞれに信号機があり、手前にはその各道路の号線や方面が書かれた青い道路標識がある。ちょっとごちゃごちゃしている。そして昨夜警官が言っていたようにーつ目の信号が青になっても次の信号は赤のままで少し遅れて青になる。

 昨夜は信号待ちの間道路標識に気をとられていたが、やはり注意が散漫になっていたのだろう。気をつけなければならない。

 

 宗谷岬はもう飽きたので、国道40号線を南下し、道道138号線で東に向かいオホーツク海側に出て国道238号線を網走方面に向かうルートを取る。

 稚内の街を出る前から雨は本降りとなっていて、決して強くはないけれどもずっと降り続けると思うとやはりゲンナリする。走っているライダーの数も少ない。

 

 猿払で国道238号に入り海沿いを南に向かって走り始めると海からの強風でいきなりあっという間に対向車線に押し出されてしまう。こんな強い横風に遭遇したのは初めて。危険過ぎる。

 スピードを落とし、直立、直進しているのにコーナリング中のようにオートバイの左側に身体を傾けマシンを抑え付けながら走る。(マンガ「あいつとララバイ」で描かれている“直線ハングオン状態”です)

 すっかり見飽きた「さるふつ公園」を通り過ぎる。

 暫くすると道は海岸沿いを離れ、林(防風林?)で風が遮られるようになるとようやく普通に走ることができるようになった。普通に走られることが有難く感じる。

 と、前方から走ってきたオートバイが二台右折して海側に向かっていったのが見える。エサヌカ線に向かったようだが、あそこは海風を遮るものは何も無い。悲惨な目に会わなければ良いのだが。

 

 それにしても今日は寒い。風に吹かれているせいもあるが気温も下がっている。悪いことにレイングローブの防水が効かなくなっていてグローブは内側まで濡れている。一昨日は我慢できたがこの寒さでは厳しい。

 シェルターがあったのでオートバイを止めて一息つく。このシェルター、飲み物の自動販売機が設置されていました。冬はありがたい存在なのかもしれません。

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ずっと後方、対向車線側に自販機があるのですが、分かるでしょうか。




 

 浜頓別に着くと昨日寄ったホーマック・二コットに入る。ずぶ濡れのレイングローブに見切りを付け代わりのグローブを探す。でもオートバイ用のレイングローブなどは置いていない。それで業務用のゴム手袋を購入する。台所仕事用の薄いゴム手袋ではなく、分厚くゴツイやつ。値段は500円ほど。もう見た目など気にしている場合ではない。

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 しかしこれが思いのほか具合が良かったです。アクセルやブレーキ、クラッチの操作に支障は無く操作性は良好。当然水が浸み込んでくることは無いし、手と手袋の間に空間があるので*1、暖かくさえ感じる。もっと早く買えば良かった。

 

 しかし厳しい状況であるのは変わりない。というかむしろ厳しくなっている。南下しているのに気温は下かっている感じ。雨と風と低温という三重苦。すれ違うライダーの数も相変わらず少ない。

 自転車ツーリストはもっと辛いだろう。普段はすれ違うときに彼らから手を振ってくることはちょっと少ないのだけど、今日は皆がみんな大きく手を振ってくる。

 手を振る事で自分を鼓舞しているのだろうし、雨風に身を打たれながら走っている者同士、連帯感が感じられる。ライダーのピースサインもいつもより丁寧で心がこもっているように感じる。

 

 途中で郵便局が見えたので、オートバイを停めてATMでお金を下ろして反則金を納付する。納付書に氏名や住所を記入するとき、全身ずぶ濡れなので気をつけていても納付書が濡れてしまい、薄い紙の納付書は破れそうになってしまった。

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 再び走り出す。何度も走っている道なので淡々と走ることが出来る。しかし興部の辺りに来たところで急に疲労を感じ始める。

 丁度昼食時なので道の駅に寄る。屋根のある駐輪場はオートバイで一杯。かなり改造を施したカタナもいる。ライダー達は建物の中で無言で気だるそうに雨宿りしている。

 とりあえず何か食べようと、カッパを着たまま近くの中華料理屋へ向かう。

 やはり暖かいものがいい。そしてエネルギー補給できるもの。ラーメンと鶏肉のそぼろ丼のセットを注文する。

 料理を待つ間テレビをぼんやりと眺める。テレビのワイドショーでは、山で行方不明になった男の子を見つけ出した爺様のインタビューを流していた。世間ではこういうことがあったのか。

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 運ばれてきたラーメンのドンブリをまずは両手で覆い冷えた手を温める。

 味よりも温かさが嬉しかったラーメンセットを平らげて道の駅に戻る。さっきいたライダー達はみな出発したようで道の駅はガランとしていた。

 

 食事をとったのに疲労はちっとも回復しない。睡眠不足と寒さが堪えているのだろうか。甘い缶コーヒーを飲みながら今日はどうしよう?と考える。雨雲レーダーを見ると気象状況は朝よりも悪化していて、網走も知床も明日まで雨が降り続くのは間違い。

 疲労した身体とこの天気ではキャンプは無理だな、と思う。今夜はホテルに泊まった方が良さそうだ。

 一昨年泊まった網走のホテルを調べるも安い部屋は無し。そもそも網走のビジネスホテルに空きが無く焦る。範囲を広げて検索すると北見のホテルには空きはあった。とりあえず一番安いホテルを予約する。

 ほっとした気持ちと挫折感が入り混じった変な気分。カッパを着て外に出る。


 するとちょうど所謂“耕運機ハンドル”*2を付けたノーマル状態のきれいな750カタナが駐輪場に入ってきた。キャンプ・ツーリング中らしく大きなバッグをリアシートに積んでいる。

 よくこんなに程度の良いナナハン・カタナを入手できましたね、と言うと30歳台らしいライダーが言うにはちょっと縁があって手に入ることができたらしい。

 「このツーリングで初めてカタナを見ました」と言って私のカタナを眺め、「これは1100ですか?足周りはGSX-Rですか?」と訊いてくる。こんな酷い天気でもカタナ乗りの習性(他人のカタナをチェックする)は変わらない。

 彼は網走から稚内に向かう予定だったが悪天候のため諦め、旭川にホテルを確保しました、とのこと。ホテル泊の選択は間違いではなさそうだ。

 因みに、網走は雨が降っていなかったそうだが今はどうだろう。

 お互いヘルメットを被ったまま雨の中での短い立ち話で、それじゃと分かれる。
晴れていればもっと楽しくいろいろと話しができたと思う。

 

 疲れた身体に鞭打ってひたすら雨の中を走る。相変わらずオートバイの姿は少ない。みんなどうしているのだろう?

 雨はまた強くなっているし、寒いし、今どの辺りを走っているかも気にならなくなっている。頭の中は北見まであとどのくらいか?だけ。

 

 サロマ湖の付近で道路の電光掲示板の “気温 13℃” の文字を見る。北海道とはいえ夏の気温ではない。気持ちが一段と凹む。

 

  再び疲労を感じてきて、そろそろ休憩しないと危ないなと道の駅「サロマ湖」に寄る。オートバイをおりると身体がこわ張ってヨロヨロする。

 休憩所の椅子に沈むように座り、iPhoneで再度ホテルを検索。時刻は午後3時を廻ったところ。

 相変わらず網走のホテルに空きは無いけど、北見の「ドーミーイン」というホテルの “天然温泉 大浴場” の文言に目が釘付けとなる。料金もそれ程高くは無い。

 ここだ、ここしかない。ホテルの外観の写真からしてそこそこの規模の駐車場もあるだろうからオートバイの駐車も大丈夫だろう。

 ドーミーインを予約し、先ほど予約したホテルをキャンセルする。

 少しだけ元気が出る。

 

 <続く>

*1:軍手の上からつけられる、という謳い文句でした。

*2:当時の日本の規制の関係で、日本国内モデルの750カタナにクリップオン・ハンドルは認可されず、”耕運機ハンドル”と揶揄されたアップハンドルを装備していました。750カタナを買った人は輸出モデルのカタナのスタイリッシュなクリップオン・ハンドルに付け替えていたのですが、これが整備不良として取り締まられ、"刀(カタナ)狩り”と呼ばれました。でも当時は無様に見えましたが、今改めて見るとこれはこれで良いかもと見えるから不思議です。